田子漁港より駿河湾3キロメートルの沖合に一対の島がある。この一対の島が田子島と呼ばれ、男島と女島からなっている。向って右が女島で、大きな波触空洞になっており、小さな船が航行できる。左が男島でどっかりしている。この附近は、伊勢エビ、サザエの宝庫とともに磯釣りの最適地でもある。

古老の話によると、その昔、田子村と隣の安良里村(現在西伊豆町安良里)とでこの島を奪いあって争った。両村ともゆずらず、島に綱をつけてショビイタ(引合った)という。そして、役所への訴えの証文を書いたが、その訴状には「田子の田子島に御座無候」と書くべきところが、どうした事か「無」の一字を書き落したため、「田子の田子島に御座候」となってしまい、裁判に勝って田子のものになったという。このことにちなんで「田子の田子島 安良里でしょびく しょびく安良里が無理なこと」、又「田子の田子島 なかががらんで エビが住む」などの里歌がある。

田子島から陸よりで、三つの島が山の字形に寄り合った形をしているのが尊之島と呼ばれている島である。伝説によると、この島は漁業の神、事代主尊(ことしろぬしのみこと)がこの島で釣りをされたので、みことの尊を一字とって「そんのしま」と呼ばれることになった。又、一説には日本武尊がえぞ征伐のとき、立ち寄ったところから命名されたものとの言われている。

田子漁港の中で一番右にあり、今山に近いのが弁天島である。ここの波静かな日の落日はたとえようもない天然の美がある。島には弁財天を祀ってあり、祭礼は毎年5月最初の己の日に行なわれ、本開帳は60年、中開帳は30年毎に行なわれる。昭和35年本開帳が行なわれた。

交通

大田子バス停から徒歩4分。田子よりへ戻ると開けた海浜に出る。